2018年8月からしばらく閉講します。 また年度変わりに受講生を募集してみます。

小学校低学年から大人まで、年齢も性別も分野も幅広く習うなら「まふじ演技スタジオ」へ!

まふじ演技スタジオ連絡先.jpg ←まふじ演技スタジオへのお問い合わせ

2016年08月18日

秘密

私はよく演技、朗読、ナレーションの教材を自作します。
そんな教材の中、いろいろな指導現場で使っている「ある作品」を読み返してみると「これもショートショートになるかも知れない」と思える内容でしたので、その自作の短い戯曲だったそれを、すこし小説文体に改稿してみました。

元が「戯曲」でしたので、小説にするといささか長くなってしまいましたが、読んでくだされば幸いです。
---------------------------------------------------
【秘密】

 ここは某警察の取り調べ室。
 「ある容疑」で連行された男の事情聴取が始まる。
 担当するのは、署内でも特に法に精通した刑事で、昨今めまぐるしく変更される法律について、彼は常にチェックを欠かさないのだ。

「なんでここに連れて来られたのか…わかってますよね?」
「いやぁ…それが…ちょっと…」
「ふふふ、シラを切ってもダメですよ?」
「とんでもないですよ。ほんとに何も……いやいや、全然わかんないんですけど…」

 ここで刑事は容疑者に優しく接することで自白に導こうとした。アメとムチの使い分け、いわゆる取り調べのテクニックである。

「じゃさぁ…ひとまず胸に手を当ててごらん……ね?」
「あっ、ドキドキしてます」
「そりゃ緊張だね、キンチョー。無理もないことだけどね? ちょっと! 何やってんの! 私は『胸に手を当てて思い出せ』って言ってんの!」
「胸に手を当てて…?」
「そう!」
「そしたら思い出せるんですか?」
「私なんかね、警察学校の受験の時、胸に手を当てて『この漢字なんて読むんだっけかな〜』と思ってたら……おいおい! 何言わせんの!」

 自分のうっかりさを覆い隠そうと、つい、いささか恫喝してしまった。相手が初手からノラリクラリしているせいかも知れない。しかし、これは取り調べのテクニックとしてはレベルが低いのだ。しかも取り調べの様子はカメラに記録されている。人権には配慮せねば。

「いや、ほんっとうに何で連行されちゃったのか、わかんないんです」
「じゃあ……ヒント言ったらわかるかな?」
「ヒント、お願いします!」

 刑事はカメラで記録されていること、すなわち、言いかえれば「容疑者の人権」を十分に意識しているようだ。

「ヒントはねぇ…」
「はいっ!」
「イエナイ」
「ファッ?!」
「イエナイ…」
「そんな?! お願いです! ちょっとだけ!」
「だ〜か〜らぁ〜〜〜」
「はいぃぃ…」
「ヒント〜わぁ〜」
「はいっ!」
「…イエナイ…」
「ああ〜〜もう〜〜! 言ってくださいよ、ヒント! こう見えて俺、クイズ得意なんです。ちょっとヒントがあればすぐに」
「あんた何言ってんの? 俺もう、ちゃんとヒント言ってるんだよ? …イエナイ…」

 刑事の目がキラリと光った。「このあたりで落ちる」と踏んだのだ。「混乱」させることで人は視野が狭くなる。すると嘘をつく余裕がなくなり、事実の記憶を喋り出すものだ。

「もう、ヒント…言ってるゥ?!」
「そう!」
「もぉぉぉ?!?!」
「そぉぉぉ!!!」

 ここで男の表情が明らかに変わった。「オチルぞ!」と刑事の胸が密かに高ぶる。
 ところが男の答えは刑事の予想を裏切った。
                 
「…わかった!! 『もう…そう』…妄想ですね?!」
「ファッ?!」
「でも、『妄想』の容疑ってなんだ? あんなこと考えたからか? でも、考えただけだったら…」
「ちょちょ、ちょ〜っと! 何言ってんの!」
「いや、だからこの間、友人に…」
「あわわわわ、言わないで言わないで、それ以上言わないの!」
「え? でも、容疑を自分で言えって…」
「待った! 私、あんたに『言え』なんて言ってないよ。『思い出せ』って言っただけだよ?」
「あ、そうか…。そうだった」
「で? どう? 思い出した?」

 男はいろいろ記憶の糸をたぐってみた。刑事もその様子を凝視していて、『今度こそ落ちるな』と確信した。

「思い出しました…」
「そうかぁ〜、やっと思い出したかぁ〜。うんうん、わかるよ。人それぞれに事情があってサ」
「実は…」
「わ〜わ〜わ〜〜〜〜言わない言わない、それ以上言わないのっ!」
「実わぁ!」
「聞こえないよ〜! 聞いたら…いやいやなんでもない」
「刑事さん…わかりました。あの…きっとアレじゃないかと思うんですけど…」

 刑事は少し安堵した。

「いいねぇ〜きっとそうだよ」
「アレ…ですよね?」
「そう…アレ…だね?」
「ドレ…でしたっけ?」
「ソレは…おっと……へっへっへっ、アレだよ〜」
「な〜んだ〜、アレかぁ! 実は私アレかなと思ってたもんで〜」
「え? ドレ?」            
「ええ、実は私…」

 今度は、刑事は両手で両耳を叩き始めた!

「ア〜ワ〜ワ〜ワ〜ワ〜ワ〜」

 しかし男はそれにかまわず告白し始める。

「くぁwせdrftgyふじこlp;@:ということを誰かに話したかも…」

 刑事はその「意味不明な自白」を「聞いた」…と思った。やっと「オチタ」…のかも知れない。

「はい、じゃ、正式に逮捕ね?」
「でも、刑事さん……オレの供述調書っての書かなくていいんですか?」

 しかし、容疑者を自白に導いた刑事は満足そうにこう答えた。

「そんなの書いたら私まで逮捕されちゃうじゃない。あんたの容疑は『秘密保護法違反』なんだからサ!」

-------------------------------------------
なんでも「度を越すと本質を見失う」というのは「笑いの本質」です(笑)
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とも言います(笑)

でも、演技に関しては、まずは「度」を越したほうが伸びます。


posted by 塾長 at 03:59| Comment(0) | どうでもいい話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

✨心温まるクリスマス・メルヘンです🎄 forkN用タイトルのコピー.jpg
ご購入はこちら(Amazon.co.jp)!!